膝に水が溜まっている場合の膝の痛み
「〇〇さんの膝に水が溜まっているか診ておいて!」
私は、学生2年目の20歳の見習い時代に急に院長から上記の様に言われました。もちろん、学校でも習わないし院長に習ったこともない、(師弟関係なので挨拶と謝罪以外に会話の記憶無し)何も分からない状態です。患者様を前にして、緊張と不安感、焦りで頭が真っ白になったことを今でも覚えています。
「こんなことも出来ないのかよ・・・」
師弟関係故の愛情だったのか、ただの八つ当たりあったのかは今でも分からない(笑)今回は、そんな苦い思い出のある「膝の水」についてです。
膝に水が溜まっているかどうかは手で分かるのか
分かります。
量によっては、触らなくても外見だけで分かります。
※そんなことで分かっても実際には何の意味も価値もありませんが。
なぜなら、左右の膝を見比べた際に「膨らんでいる」「凹んでいるべき凹みが無い」というように左右差が分かるからです。
下記の図の「赤で囲った部分に水が存在します」。
水が多くなると、お皿と太ももの間のスペースに水が多く貯留します。
つまり、水面にお皿を浮かべた様な状態になります。
お皿を押せば水面でお皿が浮いているので、「ちゃぷちゃぷ」した感触が得られます。
これを左右で比較すれば分かります。
現在ではエコー(超音波検査)によっても画像で確認することが出来ます。
上記の方法以外にも手で診る方法があり、私は実際にはダブルチェックの為にここに記載の方法以外も用いていますが、ここでは割愛します。
水はなぜ溜まるのか
極論すると「膝の動きが悪い」「膝の動きが正常ではない」からです。
そもそも、「水」は潤滑油の役割をしています。
関節の動きを滑らかにする為に「適量分泌されて適量吸収されている」ものです。
つまり、正常でも水は存在しています。
でも、多く分泌されてしまったが故に吸収が追い付いていない状態が、問題の状態になります。
「膝の水を抜くと癖になりますか?」
というご質問を伺うことがあります。
多く分泌してしまった理由は、膝の動きが滑らかでないからです。
従って、滑らかさが改善されなくては繰り返す可能性があります。
癖になる訳ではありません。
尚、リウマチなどの全身性の持病をお持ちの方は例外もありますのでご了承下さい。
膝に水が溜まると感じる症状
・曲げにくい。
・痛い。
・はばったい。
という訴えを耳にすることが多いです。
歩行や日常生活では、膝が曲がらないと不便です。
従って、「曲げにくい」ということは、歩きにくい、階段が交互に降りられない、上れないということも想像出来るかと思います。
中年以降で、このような症状にお悩みの方は↓の記事に詳しく書いてあります。
しゃがめない・階段の下りで不安になる足・膝付近の張りと痛みについて
膝に血が溜まっている場合もある
スポーツ選手のケガの際に耳にする
・前十字靭帯
・後十字靭帯
・半月板
・内側側副靭帯
・外側側副靭帯
等の損傷時には、膝の内部に血液が溜まることがあります。
もしくは、水に血液が混じっている可能性があります。
これらは普通に生活していて、「気が付いたら損傷していた!」というケースは稀です。
つまり、明確な原因がある場合には、それらの損傷を確認する為に注射で水を抜くことで血液が混じっていないかを判断するケースがあります。
※外見からは判別不能。
これらの損傷は、手術適応にもなるケースがあります。
つまり、手術以外の方法でやっていても改善が乏しいことを意味します。
従って、「これらの損傷があるのかないのか」は水云々に関係なく非常に重要です。
当院では、手で行う検査と問診にてこれらの可能性を考慮してMRI検査を勧める場合があります。
水が溜まっている場合の治療法
前述の通り、水が必要以上に分泌されてしまった理由を取り除きます。
溜まっている量によっては、それだけで十分な改善が望める場合もあります。
それでも、溜まっている場合には安静時にはサポーターや弾性包帯で圧迫をしてもらい吸収を促します。
水の吸収が乏しく日数を要している場合には、整形外科を受診のうえ注射で抜いて頂くことになります。
理由は、なるべく早期に適量の状態にしないと軟骨の破壊が進み、膝の変形リスクが上がるからです。
理想は、原因を取り除くことが先決です。
しかし、時と場合によっては「注射で水を抜くことも必要」になります。
抜くのがダメとか、対症療法に過ぎないとか、極端な考えになりがちなので冷静な判断が必要です。
変形は一度したら戻らないので、優先順位を明確にして臨機応変な選択をされることをお勧めします。
膝の動きが滑らかでなくなる理由
別記事でも書いているので端的に述べます。
太もも、すね、お皿の3者の位置関係が乱れるからです。
その理由は、
・姿勢や歪み、動き方の癖による関節の問題
・姿勢や歪み、動き方の癖による筋肉の問題
が考えられます。
膝は、太ももとすね、股関節と足首に挟まれた関節です。
しかも、「膝は回すことが出来ずに、曲げ伸ばしだけ出来る関節」です。
物理的に、力が逃げにくい。
力を逃がしやすい、様々な動きが出来る股関節や足首の小さな問題が膝の問題を引き起こしているケースは珍しくありません。
従って、こちらも膝だけにフォーカスしていては結果に繋がらないケースが多々あります。
「マッサージじゃだめ」
「最新の電気治療でないと」
「レントゲンを撮らないと」
「MRIをとらないと」
という問題ではないです。
全体を診て問題を特定したうえで、方法論の話が必要になります。
問題をある程度絞ったうえで、最後に特定する為に然るべき検査が必要です。
安心感を得たいのか、改善を望むのか。
目的を明確にして、選択されることをお勧め致します。
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