変形性膝関節症と階段の昇降での膝の痛みについて
「軟骨がすり減っているから」
「加齢で変形しているから」
膝の痛みの原因において、この2つが有名です。
でも、それ以外のマイナーな原因による痛みの方が多いことをあなたはご存知でしょうか。
病態の違いによって病名が分かれている訳なので、それを快方へと向かわせる方法にも「違いをつけた方が良いのではないか」というのが私の考えです。
でも、整形外科を受診後に診させて頂くケースの中には「手術適応か否か」の2択で治療法が選択されているのではないか?と憶測ながらも思うケースがあります。
これは、どちらが正しいとか間違いという話では無くて、「違い」についての話です。
※そもそも、私には手術や投薬ができないので手の施し方に相応のバリエーションがあって当たり前。
あなたに改善の余地があるのに、「あなたが知らない」というだけでその可能性を活かせない事は勿体ないことだと私は考えています。
今回は、膝の痛みについての記事になります。
こちらの記事も併せてお読み下さい。
成長期の運動をしている子供の膝前面の痛み(オスグッド・シュラッター病)
この記事は、およそ2分で読むことができます。
膝の痛みの原因
①膝の構造の問題:軟骨のすり減り、膝の変形(認知度が低いものとしては脂肪体)
②膝の機能の問題:捻れるべき時に捻れない、スライドすべき時にスライドしない、動くべき時に動かない等
③①+②
膝の痛みは、この3つに大別出来ます。
40代以降になると③に該当する方が多くなります。
それ以前の方は②が多いでしょう。
基本的には、①単体の方は少ないです。
理由は、①は「摩耗が原因」なのですが、「満遍なく摩耗している訳ではない」からです。
多くの方が「内側がすり減っていたり、変形が強くなったりしています」。
日本人には内側タイプが多いとも言いますが、言い換えると「②に特徴があるから」そのようになる訳です。
従って、①になっている時点で(満遍なく起っている方は別)②はたいてい存在しています。
例外的には、(私もそうですが)半月板や靭帯・骨折などで膝の手術や怪我を経験された方は①単体もあり得るとは思います。
多くの方が該当する③においても、その内訳が異なります。
・①>②の膝の痛み
・①<②の膝の痛み
その中でも極端ですが、
・①:②=4:5 の膝の痛み
・①:②=1:9 の膝の痛み
など、その内訳はケースバイケースであり、その内訳によって改善の可能性が変わります。
また、個人的には下記の2例の様に「どちらも構造的な問題が占める割合の多い」膝の痛みだとしても手を施すうえでは、別物だと考えて行っています。
・構造面の問題:機能面の問題=9:1
・構造面の問題:機能面の問題=6:4
私が出来るのは「機能面の問題の改善だけ」なので、どちらの方も「膝の痛みを皆無にする」事はもしかしたら不可能かもしれません。
従って、前者のケースならば1割、後者の方であれば4割、の改善に価値を感じる方には有益でしょうし、それに価値を感じない方には無意味とも言えると考えています。
話を戻すと、①は構造の問題なのでレントゲンやMRIなどの画像検査で判明します。
※脂肪体はエコー検査や触診。
②は機能の問題なので、静止画である画像検査では分かりません。
なので、触診で検査します。
日常に例えると、
◎画像検査でわかる構造面→面識が無くても画像でお顔は分かる。
◎触診で分かる機能面→顔写真の画像だけで性格までは分からないけどお会いして話せばもう少し全体像として「その人」が掴める。
画像検査で得られる構造面と触診検査で得られる機能面を例えるならば、こんな感じでしょうか。
従って、仮にあなたの膝の痛みが「然るべき触診無しで画像検査だけで診断されたケース」であればその時点で①にしかなり得ないので①になります。
①の軟骨のすり減りや骨の変形は一般的な認知度は高いです。
逆に、②はマイナーな認知度です。
理由は分かりませんが、②については西洋医学で明らかになっています。
膝の痛みは水が溜まっているから?
「膝に水が溜まっています」
このケースもよく経験します。
これは、前項の①〜③のどのタイプでも起こり得ます。
従って、「水が溜まる原因が何なのか??」という視点が必要になります。
詳しくは↓の記事をお読みください。
膝の水を抜くと癖になるのか?
「水を抜くから癖になる」のは、間違いです。
「膝の動きが悪くなった原因がそのままだから再度、水が溜まる」のが正解です。
だから、水を抜くことが悪い訳ではありません。
水によって、パンパンに腫れた場合には「膝の中の内圧が高くなることで」痛みが増します。
内圧が高まれば、動かす際にも支障がでるので「溜まっている量」や場合によっては抜くことも大切です。
膝に水が溜まっているかどうかは、視診と“膝蓋跳動“という触診によって判別可能です。
字の通り「膝蓋=お皿」が「跳動=溜まった水の上で跳ねるように動く」のを触診で確認します。
慣れていればすぐに分かりますが、必ず左右で比べることが重要です。
因みに、膝の内部の靭帯が損傷した場合や骨折がある場合には、「水でなくて血が溜まる」ことになります。
だから、抜いた液体の中身が「黄色がかった水(関節液)」なのか、「血」なのかは、その後の治療が変わる為に重要視されています。
なぜ、痛くなるのか
膝は、
・すね
・太もも
・お皿
で構成される関節です。
つまり、この3者の関係性の破綻が冒頭に述べた「②の膝の機能の問題」になります。
言い換えると、この3者の関係性を
「いかに正常化するか?」
が治療になります。
◎膝を正面から見た図(右膝)
◎右膝を外側から見た図
太もも、すね、お皿は単体で動かない
膝が伸びる時には、“太ももとすねが捻れることが必須条件“です。
膝が曲がる時にも、これは同様です。
※私達がフェイスタオルを絞った時の様に「太もも」と「すね」は捻れます。
※捻れている中央部分が「膝」で握っている部分が「太もも」と「すね」。
また、膝の曲げ伸ばしの際には、お皿が上下にスライドする事も必須条件です。
因みに、これは私の持論ではなくて西洋医学的な常識です。
ここで、実際にあなた自身の膝で以下のことを試してみて下さい。
・太ももを捻ってみて下さい。
・すねを捻ってみて下さい。
どの姿勢でやっても必ず、股関節や足首が動きますよね??
もっと言えば、腰や体も動くと思います。
太ももやすねが捻れるには、「足首や股関節、腰や体」の動きが必要です。
逆に言えば,「足首や股関節、腰や体の動きが異常ならば、それは膝の問題になり得る」ということです。
②の膝の機能の問題の有無を見るには、ある程度体全体を診る必要があります。
太もも-股関節-骨盤-腰-背中・・・
すね-足首-踵-足の甲
という具合に「動きの連動性を診ていく必要があります」。
捻れるべき時に捻れない→膝の曲げ伸ばしに支障が出る。
お皿が動くべき時に動かない→膝の曲げ伸ばしに支障が出る。
体の構造上そのようになるハズなのですが、「自覚が出るとは限りません」。
理由は、股関節や足首は可動域が大きい関節なので「代償」することが出来るからです。
※「膝を回す」ことは不可能だけど、「股関節や足首は回せる位に可動域がある」関節。
でも、「必ず、その代償のしわ寄せは起きているハズ」なのです。
その蓄積が、「偏った軟骨のすり減りや変形」です。
階段昇降時の膝の痛み
階段昇降時の膝の痛みは、前項の「捻れ」「お皿の上下スライド」の異常が原因であることが多くあります。
つまり、膝の変形が直接的な原因で無いケースが多いです。
その捻れ、スライドを正すには、膝以外の部分を正す必要があるので、「膝ではなく、それらの部分の変形」の方が改善の余地を考えるうえで重要です。
いずれにしても、「膝の変形があるから階段昇降時の痛みは仕方ない」と一概に諦める必要はありません。
軟骨のすり減りや変形の予防法
一度、すり減った軟骨や変形した骨が正常化する可能性は低いです。
※すり減り具合や変形によっては手術しか方法が無 い場合もあります。
従って、「これ以上、すり減らさない・変形させない」ことの方が現実的だと思います。
軟骨や骨にも当然ながら栄養が必要です。
軟骨は主に膝の水である「関節液」から栄養を貰うことで維持しています。
骨は、血液自体から栄養を貰い新陳代謝をして維持しています。
前述の通り、膝の水(関節液)は膝の動きを滑らかにする潤滑油です。
つまり、膝の動きと分泌・吸収量に関係性があります。
「動きが悪いと」沢山分泌されて、吸収が追いつかない。
でも、動かさないと「関節液の分泌・排出が減る」。
川の流れと同様で「常に流れている方がキレイ、良質」な関節液でいられます。
膝が正常に動く・動かせることが、軟骨が関節液から栄養を貰ううえで重要です。
だから、端的にいうと「膝を正常に動かせる状態にすること」が軟骨のすり減りを防ぐには大切です。
骨は血液から栄養を貰うので、もちろん「血流が良い方が望ましい」です。
それ以外では、「骨の特定部分にかかる負担を分散させる」ことが予防になると考えます。
水滴でも長年滴り落ちれば、コンクリートを削ることがあります。
でも、それを分散させられたら、水滴がコンクリートを削る可能性は低くなると思います。
話を戻しますが、一点集中している負担を分散させられるような膝の状態にすること。
端的にいうと「膝を正常に動かせる状態にすること」が重要です。
つまり、軟骨にとっても骨にとっても結局は「膝を正常に動かせる状態にする事」が私の仕事になります。
当然、「正常に動かせる“のにも関わらず“動かさない」場合には、結果的に「何も変わらない」ことになります。
従って、あなた目線で書くと「正常に動かせる膝になったら、積極的に動かす」ことが不可欠になります。
筋肉を付けると膝の痛みは消える?
膝の痛みに関わらず、筋肉は重要です。
でも、一般的な認識とは相違があることを経験します。
一般的には、筋肉で「問題を覆い隠す」ことを目指しています。
※腰痛だから腹筋・背筋をつける!膝が変形しているから筋肉をつける!等
それは、表面的な見解で勿体ないと思います。
「筋肉とは、骨の位置を変える」
ものです。
つまり、太ももやすねを捻るのも、お皿を上下に動かすのも、筋肉が行なっているものです。
それ全てを網羅した特定の筋肉はありません。
だから、筋肉を付けるにも
「どの筋肉を付けるのか」
「どの筋肉は(敢えて)付けないのか」
という視点が必要になります。
極論ですが、捻りたい方向と逆の働きを持つ筋肉を付けると、余計に目的とした方向には捻ることができなくなります。
「膝の痛みには、太ももの前側の筋肉を付けると良い」
これは事実ですが、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋が有名)のどれを特に鍛えるのか。
※大腿四頭筋は、名前の通り4つの筋肉から成る総称です。
それぞれの筋肉の位置関係から
「その筋肉が伸び縮みする事で、どのようなベクトルで関節が動くのか」
基礎知識を基にしたイメージで鍛えるべき筋肉を特定します。
そこで、あなたがもし「鍛えようと思っている筋肉名称」が明確な場合には画像検索してみることをお勧めします。
その筋肉の
「両端が近づいたらどうなるだろう」
「両端が離れたらどうなるだろう」
画像を見てイメージしながら、ご自分の体でやってみれば「その筋肉の役割」が分かります。
あくまでも、「現状から考えてどのような膝にすべきななのか」がわかっていないと「筋肉の役割が分かったところで無意味」ですが、それが分かっている方は、そこで導き出された方法が「あなたにとっての正解」です。
細かな点にご留意頂くことで、同じ労力でも更に改善の可能性が高くなると思います。
変形生膝関節症なので正座は厳禁?
「正座はしない方が良いと言われたのでしていません」
このように伺うケースが沢山あります。
これは、正解でもあり間違いでもあります。
「日常的に正座をする」
これは、膝に負担が掛かり過ぎるので好ましくありません。
でも、可動域を得る為、可動域を維持する為のエクササイズとして行うのであれば有益です。
なぜなら、ご自分だけで、正座以外の方法によって「あの角度まで曲げられる方法」はあまり無いと思います。
前述の通り、膝の軟骨の栄養は良質な関節液から得られます。
良質な関節液を得る為には、可動域が正常に近い方が良い訳です。
可動域は、動かさなければ減少していくものです。
データにもよりますが、あなたが今現在に何の問題もなくても40日間膝を動かさなければ「2度と正座ができなくなる」ことに理論上はなります。
40日なんて、あっという間だと思います。
「今は忙しいからその内にやろう」
リスクを承知でされた決断ならば問題ありませんが、先延ばしにした結果が一生ものでは気の毒だと思います。
「どの程度、痛みを我慢して行うべきなのか」
「どの程度の時間、頻度で行うべきなのか」
これはケースバイケースです。
でも、「正座はダメなんだ」という固定観念は、本来の意味と違うと思うのでお伝えさせて頂きました。
膝の痛みにお悩みの方へ
あなたの膝を実際に診たことがない場合には、あなたの膝に改善の余地があるのかどうかは私には分かりません。
甘い言葉で希望を持って頂くことではなくて、現実的な改善の可能性を模索することが私の仕事だと考えています。
でも、今回お伝えしたような事柄を初めて耳にされた方は、現実的に改善の余地がまだまだあると思います。
この記事が、何か1つでもあなたの膝の痛みにおいて役立つ内容であったなら嬉しく思います。
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