股関節の詰まり感・痛み・違和感について(変形性股関節症、グロインペインを含む)
関節とは骨と骨の継ぎ目、連結部分を指します。股関節は腸骨(寛骨)と大腿骨の連結部であり、その適合をフィットさせる為に関節唇というものが存在します。その関節を動かすのが各筋肉ですが、股関節の問題は交通事故や転倒などの外傷を除いて、原因を遡り、共通点を絞り込んだうえで言うと「腸骨(寛骨)側」「大腿骨側」のどちらかの問題に辿り着くことが多い経験から感じます。日常はもちろん、サッカーなどのボールを蹴る競技の方にも多い状態、お悩みになります。
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股関節の詰まり感・痛み・違和感は治るのか?
治るものと治らないものがあります。それは、レントゲン検査をすれば分かります。関節の適合の問題であれば可能性がありますが、骨自体の形状による不一致が原因である場合には残念ながら治りません。(下記のそれぞれについて述べているので、ここでは名称のみ列挙)
・先天性股関節脱臼歴のある変形性股関節症
・臼蓋形成不全
・大腿骨骨頭の形成異常
・ピンサー型、カム型など
但し、骨の形状の異常は「更なる変形を招く」恐れが高くなります。それを、防ぐことは継続的な加療において可能です。レントゲン検査によって、医師からそれらの説明及び、今後についての然るべきプログラムの提示、その処方下で信頼出来る理学療法士からの明確な施術を受けることが可能な場合には考慮する必要はないと考えますが、実際には診断による現状把握のみで終わってしまう場合や健康保険による治療部位の制約、院内の連携によって十分なレベルに至らないこともあります。そのような場合に、現状打破を目指すにあたって他院に行かれる場合には、
・レントゲン画像をCDで頂く
・レントゲン画像をスマホで撮影する
などして、画像をお持ちのうえでご来院頂くことも考慮して頂けると私が診させて頂く側であれば、非常に助かります。
股関節の詰まり感・違和感の原因
①【骨自体】の形状による問題
②【関節】の不適合による問題
の二通りが考えられます。
①【骨自体】の形状による問題
股関節は、骨盤と太ももの二つの骨から成る凹凸関係の関節です。
この股関節を形成する
・太もも
・骨盤
の【骨自体】の形状が特殊な場合には、通常の凹凸関係が築けない為に
・詰まり感
・痛み
・違和感
が出てしまうことがあります。
<腸骨(寛骨)側の形状による問題>
<太もも側の形状による問題>
このような場合には、上述のように骨自体の形状を変えることが困難な為に、症状が完全に消えることは難しくなります。骨盤側の問題の場合には、脱臼などのリスクが高まることから程度に応じて手術の適応になる場合もあります。但し、プロアスリートにおける調査では、約半数の選手が「骨自体の形状の異常を伴っているものの、痛みがないケースも多い」との報告もあり、実際の症状と変形との関係性においては、下記に述べる点を考慮する必要があります。
②【関節】の不適合による問題
前述の通り、股関節を構成しているものは
・骨盤
・太もも
です。
この両者の間隔が通常よりも狭くなってしまうことを【変形性股関節症】と言います。【変形】と聞くと加齢だから仕方ないというイメージを持たれる方も多くいます。それは事実ですが【なぜ、股関節が変形に至ったのか??】という視点で見ていくと、改善が望める場合があります。つまり、股関節ではなくて股関節以外の部分の問題を長期間放置したが為に問題が股関節に波及してしまったのではないか・・・と考えることも出来ると私は思います。
股関節は
・膝
・骨盤の仙腸関節や腰仙関節
という関節に上下を挟まれた位置関係です。つまり、股関節に負担を掛けたり、掛けられたりという身近な関節になります。この両者または、どちらかの関節に問題が生じていたとすると股関節の症状は出やすくなります。従って、この場合で言うと問題のある両者、またはいずれかを正していくことが股関節の症状を改善するうえで不可欠になります。
※ここで言う「問題のある」というのは必ずしも、「痛みがある」ということではありません。痛みが無くても検査をすると問題が残存していたりすることを指しています。
◎腰についてはコチラをお読みください。腰痛の原因・タイプ別にみる対処法
◎膝についてはコチラをお読みください。階段の上り下りで感じる膝の痛み
補足として、実際の話をすると前述のように
・膝
・仙腸関節・腰仙関節
の両者に隣接する
・膝であれば足首
・仙腸関節や腰仙関節であれば腰や首の関節
の問題・・・というように繋がりを意識して、掘り下げて診ていくことが求められます。
股関節の詰まり感と反り腰の関係
立った状態で前屈する場合。
仰向けで股関節を抱える様に曲げていく場合。
両者共に「股関節は曲がっています」。
ただ、その内訳が異なります。
足に対して、骨盤が曲がっていくのか。
骨盤に対して足が曲がっていくのか。
純粋な股関節の問題(変形や異常)の場合には、この両者で
・詰まり感
・痛み
などが生じます。
もしあなたの股関節を曲げた際の症状が
・立って行う前屈
・仰向けで股関節を曲げた時
とシチュエーションによって異なる場合には、改善の余地があります。理由は、股関節以外の条件が変わることで症状の有無に違いが認められるからです。
例えば、仰向けで右股関節を曲げる場合には、
・右側の骨盤の後傾(股関節後方の筋肉の弛緩と前方の筋肉の収縮)
※図は前傾なので逆をイメージして下さい。
◎股関節の前面の筋肉
◎股関節後面の筋肉(第一層目)
◎股関節後面の筋肉(第二層目)
・腰椎の屈曲(腰が丸まれるかどうか)
・左側の股関節の伸展(ベッドから浮かないでいられるか)
といった要因が不可欠になります。
これらが欠けてしまうと「骨自体の問題が皆無でも」股関節を曲げた際の詰まり感、違和感が生じる可能性があります。
もう一歩、各患者様に想像しやすいように踏み込んで言うと
・右足を上に足を組む事が多い。
・右足を前に(左足を後ろに引いて)して座る事が多い。
・体幹の筋力不足で下っ腹が出ている「反り腰」傾向。
・横から見ると顎が上がった姿勢。(頭痛持ちに多い)
などの様な場合も挙げられます。
もちろん、これらはそれぞれ絡み合います。
また、「これらの条件自体が何かの異常の結果に過ぎない」場合もあります。
その場合には、
・右足を上にしてしまう原因は何のか。
・反り腰・体幹筋力の低下の原因は何なのか。
・顎が上がってしまう原因は何なのか。
を見つけ手を施す事になります。
【股関節の詰まり感は足を逆に組めば治る】
【股関節の詰まり感は体幹の筋肉をつければ治る】
【首のストレッチで股関節の詰まり感も治る】
大事なのは「そういうケースもある」ということを知ることだと考えます。あくまでも、短絡的に考えない様にご注意下さい。
脱力時の足の開き具合いの左右差について
「片側はつま先がえらく外を向いている」
このように、脱力時(仰向けなど)の左右差を認める方は少なくありません。
これらにはいくつかの原因が考えられます。
①そもそも体が捻れている。
②膝・すねで外側に捻れている。
③足首が外側に捻れている。
④股関節を内に入れる(内旋)可動域に制限がある。
⑤股関節・太腿を外に向ける筋肉が相対的に強い。
⑥股関節・太腿を内に向ける筋肉が相対的に弱い。
⑦太腿骨の形状の問題。
①から③は、視診で分かります。
④から⑥は、触診と手で行う検査で分かります。
⑦は手で行う検査がありますが画像検査が最も正確です。
筋肉の強い・弱いについてですが、「股関節を内側に入れる可動域に制限がある状態で」筋肉を強くしても何も変わらない事が見落とされがちです。
内外の可動域がイーブンな状態で、それぞれの方向に引っ張る筋肉がもう一方より強いから、脱力時に強い側に引っ張られることでその姿を呈すことになります。
可動域制限・他の問題が皆無だと仮定して、以下の図の筋肉などが相対的に強いと「つま先は外を向きます」。
脱力下で他人が動かしても、可動域に制限が認められる場合には、その可動域制限の原因を取り除かない限りは、筋肉を鍛えて引っ張っても状態を変える事は不可能です。当然、可動域制限の原因が前述の様な改善不可能な状態であれば、筋肉をつけて向きを変える事は不可能になります。また、相対的に弱い側と強い側に同程度の筋トレをしても「差が埋まらない」ので、状態が変わらないこともご留意下さい。これは、「可動域を出す」為のストレッチでも同様なのでご注意下さい。
股関節のストレッチ・エクササイズについて
前述の通り、同じ股関節の症状でも内部の状態は異なります。つまり、何をどう施すべきか?もそれぞれ異なります。
【骨自体の問題】で、
・つまり感
・違和感
を感じている場合に、股関節の可動域を出すようなストレッチを行うと関節を傷める恐れがあります。なぜなら、【曲がるハズのない状態にも関わらず、無理やり曲げようとしたことで衝突する、関節唇が挟まるから】です。関節唇(関節内にある組織)を傷めると問題はより長引き、(関節を構成する組織を傷めたことになるので)変形性股関節症への移行のリスクが高まります。
・股関節のストレッチ
・股関節のエクササイズ
・股関節の治療を受ける
・股関節の手術を受ける
これらは、股関節以外の問題が改善した後に行うべき内容です。注意が必要なのは「効いている気がする」という自覚です。やっていることが正しければ身体には新陳代謝が存在するので大抵の場合には治ります。治っていないということは「必要なことを何もしていないか(不足)」「余計なことをしているか(過剰)」になります。ここは改善が乏しい方の大半が陥っている落とし穴になります。ぜひ、ご留意ください。
股関節自体が問題の場合の治療
前述の通り、股関節以外の問題に該当しない場合には股関節自体に手を施します。
一例ですが、股関節を曲げると左図のような現象が起こります。
股関節を曲げた際に
・詰まり感
・痛み
・違和感
がある場合には、右図にあるような股関節の後面の硬さなどの問題がも考えられます。その部分の問題を解消する為に筋膜リリースをはじめとした方法で柔らかくしていきます。股関節後面の硬さが改善すると、股関節を曲げた際の正しい動きが回復します。
その結果、
・詰まり感
・痛み
・違和感
が改善することになります。
最後に
↓私は柔道整復師という資格で、当然ながら医師でも理学療法士やトレーナーでもありません。本来、「人体」自体は診る側の資格や立場によって変わるものではなく、個人差はあれど”同じ””一律”だという認識です。現に、習う基礎医学の大枠は同じで、違いはそのカリキュラムの”深さ””角度”と学ぶ側の”理解度”だと思っています。従って、私は方法論ではないと考えています。問題を的確に把握することが出来れば、解決策は自ずと決まるものであり、現状把握や解決策の立案スキル、それを自分の身体を用いて患者様相手に実践するスキルを追求する為に下記の書籍などの解剖学や生理学、運動学といった基礎医学を参考にしています。たまに初診の方やその予約時に誤解されるので述べますと、全ての資格や立場の方に最大限の敬意を持っているつもりですが、別に憧れている訳でも崇拝している訳でもありません。私はただ、対峙した症状や状態に対して”淡々と勝ちたいだけ”です。でも、生まれた瞬間から生物として最期に向かっている人体を相手に、尚且つ対人間関係のうえで成否が左右され得ることから、そんなに容易ではないありません。でも、それに甘んじていたり、斜に構えたり、精神論で片付けていても結局何も変わらなかった日々を恥ずかしながら多く経験して来ています。だから、現実を見たうえで勝つ可能性が1%でも高まることを実行しているまでです。基本的なスタンスと目的地の共通認識がかけ離れているとお互いに時間を浪費して終わることが多いので、誤解なきようにお願いします。
参考
仁賀定雄(2021)『セラピスト・トレーナーと取り組む 難治性グロインペインーさらば診断できない鼠径部症候群ー」Orthopaedics vol.34 No.8
熊谷匡晃(2019)『股関節拘縮の評価と運動療法』運動と医学の出版社
建内宏重(2020)『股関節 協調と分散から捉える』ヒューマン・プレス
永井聡 対馬栄輝(2018)『股関節理学療法マネジメント』メジカルビュー社
青木治人(2019)『スポーツリハビリテーションの臨床』メディカル・サイエンス・インターナショナル
2025. 7.13 一部編集
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