「良い姿勢」が推奨される外見以外の理由とその方法について
「良い姿勢」が望ましいことに異論がある方はいないでしょう。
では、なぜ良い姿勢が望ましくて、悪い姿勢は望ましくないのでしょうか。
その理由を整理することで、「姿勢が悪い」ことの“健康面“でのデメリットを改めてご認識頂き、「良い姿勢への心掛け」の一助となれたら嬉しいです。
この記事は、約3分で読み終えることが出来ます。
「良い姿勢」に対する誤解
初めに、「良い姿勢」の認識が違っている方も少なくないので、この点について触れさせて頂きます。
・胸を張っている。
・背筋がピンとしている。
これらを一概に「良い姿勢」と評価することは出来ません。
胸を張っていても、“体の構造上“悪い姿勢の方はいます。
背筋がピンとしていても同様です。
ビジュアル的な良い姿勢と、健康面での良い姿勢は必ずしもイコールではありません。
因みに余談ですが、私はデザイン的に好きな靴であればサイズがキツかろうと多少ブカブカだろうと履くこともあります。
※この仕事をしている者としては失格かもしれませんが、自分がこのようなタイプなので患者様に日常生活でのことを執拗に言うことはありません。
今回の姿勢も同様に、ご自分が良ければ構わないと個人的には思うのですが、後に後悔しない為にその“デメリットと違い“については知っておく必要があると個人的に考えています。
参考までに以下に、「良くない姿勢のタイプ」の名称だけ挙げておきます。
・フラットバック姿勢
・ミリタリーバック姿勢
・スウェイバック姿勢
・後弯前彎型(カイホーティックロードティック)姿勢
などが代表的になります。
良い姿勢である理由
メリットは多々あるのですが、端的に言うと
「呼吸量を最大限にすることで、新陳代謝が促進されるから」
です。
体は、どの細胞も日々の新陳代謝で古い細胞から新たな細胞へと置換されています。
細胞は、「各器官、各臓器を作る」ので、馴染み深いところで言うと
・皮膚
・筋肉
・骨
・女性であれば子宮内膜(生理によって)
等があります。
呼吸は、当然ながら「無意識に行うもの」です。
「良い姿勢」は、無意識下で行っている呼吸の質を良くする事になります。
極論を言うと
「悪い姿勢」の方が、新陳代謝を良くする為にあらゆる取り組みをしても一時的になってしまうことになります。
継続すれば良いだけなので、別に構わないという方もいると思いますが、このような現実も知っておいて損はないと考えています。
なぜ、良い姿勢だと呼吸の質が向上するのか
これは、説明するよりもご体感頂いた方が早いと思います。
★ご自身が思い付く「悪い姿勢をしてみてください」。
★その姿勢で深呼吸をしてみて下さい。
★ご自身が考える「良い姿勢をして同じことをして下さい」。
いかがでしょうか??
経験上、9割以上の方で後者の方が「吸いやすい」ことを体感することが出来ます。
これが理由です。
体格や年齢によって、一度に吸える・吐ける量には必ず「差はあります」。
なので、他人との比較はどうでもいいのです。
「あなたのベストと比べて、日常で出来ているのかいないのか」
これが重要です。
呼吸は、「胸郭」という
・あばら骨
・胸椎(背骨の一部分)
・鎖骨
・胸骨
で形成される「骨による“籠(カゴ)状“のもの」が膨んで、縮んで・・・を繰り返すことで行われます。
これらは、胸郭自体のコンディションと横隔膜、肋間筋という2つの筋肉のコンディションによって決まります。
【筋肉は、骨から骨にかけて存在している】
ので、物理的な観点から
【最も伸び縮みしやすい距離が決まっています】
例えば、吊り橋をイメージして下さい。
両岸の距離に対して、吊り橋が短すぎたても長すぎても耐久性は落ちますよね?
数字を見るだけで寝落ちしそうになる文系の私には分かりかねますが、計算すればベストな長さは決まっているのでしょう。
筋肉も同様です。
【どうやって、横隔膜・肋間筋が働きやすい状態にするのか??】
それが
【良い姿勢】
なのです。
良い姿勢は作るものなのか
「姿勢の成り立ち」を知って頂くことでその理解が深まると考えます。
背骨は、横から見ると「S字構造」です。
赤ちゃんの姿勢を思い返して頂くと一目瞭然なのですが、生まれた時はS字ではありません。
四つ足動物の名残?なのか不明ですが、人間も丸まった背骨で生まれてきます。
その後、
・首がすわる
・ハイハイ
・二足歩行
等の過程を経て、思春期以降にS字構造が完成すると言われています。
※「姿勢と学力の関係」「姿勢とメンタルの関係」についての指摘もあり、思春期以前の子供とその後の相関関係については個人的に興味を持っています。
そもそも、S字構造のメリットは「バネのスプリングのような役割」です。
頭の重さ、重力や床・地面からの反発力を効率良く分散する為の構造です。
つまり、S字構造が破綻している(悪い姿勢)と、これらの恩恵を受けられないことになります。
話は逸れましたが、「良い姿勢はそもそも後天的に作られるもの」です。
だから、その過程によっては「良い姿勢を身につけられない場合もある」のです。
更に後天的に身につけたS字構造と真逆の、丸まった姿勢は先天的に備わっているものです。
だから、意識しなくても「丸まった姿勢」になれるのに対して、「良い姿勢」は意識しなくては出来ません。
これらの理由から良い姿勢(S字構造)になること、維持することは、決して簡単なことではありません。
意識するかしないか、その為の行動をとるかとらないかは別として、これは事実なのでご認識頂けたらと思います。
良い姿勢をとる為に必要な要素
①良い姿勢をとり得る「関節の可動域と筋肉の柔軟性、筋力」
②良い姿勢を自分で認識出来る感覚
③継続性
になります。
これらの番号順にステップアップしていくことが一番効率的だと思います。
①良い姿勢をとり得る「関節の可動域と筋肉の柔軟性、筋力」
これは、主に私を含めた専門家にお願いすることが望ましいと考えます。
理由は、
・柔軟性が必要な筋肉
・筋力が必要な筋肉
を混同すると結果が出ないためです。
ストレッチや筋トレの方法論以前に、
「どこを伸ばして、どこを鍛えるのか」
これを把握しないまま行っても、姿勢の観点からは無意味になります。
把握したうえで、ご自身で取り組むことは非常に大切だと考えています。
また、関節の可動域に関しては、自分では把握すること自体が不可能です。
※ご提供している私でも自分自身の背骨の関節可動域を調べようがない為。
24個の背骨と骨盤(三つの骨からなる)、足それぞれの可動域が正常であることが、筋肉以前に大前提として必要です。
↓首の骨(頸椎)の関節の可動域を見ているところ。
②良い姿勢を自分で認識出来る感覚
ダンスの振り付けや各スポーツのフォームを習得する過程にこれは似ています。
ご自分の感覚と他者からのフィードバックを擦り合わせていく段階です。
あなたが求めているレベルと現在のレベルの差を埋めるには、趣味レベルの取り組みで良いのか、プロレベルに取り組まないと無理なのか。
前述したような、「良い姿勢によるメリット」をあなた自身がどの程度必要としているのか?によって、取り組むべきレベルは異なると思います。
いずれにしても、
「認識出来ないのならば、擦り合わせるしかない」
し、
「擦り合わせればある程度は出来ること」
になります。
③継続性
余談ですが、私は決して姿勢が良くありません。
でも、仕事上そのデメリットは把握しています。
そのデメリットとその改善に割くべき労力を比較した結果、私はそこまでストイックに自分の姿勢に対して取り組んでいません。
(ほぼ毎月、私がご提供している矯正を信頼出来る先生から受けてはいます)
将来、後悔するのかもしれませんが現時点でそれは分からないし、なったらなったで自分の判断を反省し、(実際に体感した者しか分からない部分が必ずあると思うので)それを反面教師にして頂ける様にシェアしていくだけです。
私がここでお伝えしたいのは、ストイックに取り組んで頂くことの必要性を説いている訳ではないという事です。
現実をご理解頂けたら十分だと考えており、取り組むかどうかはあなた個人の目的、将来設計と価値観に合わせてご選択頂きたいと考えています。
※これは、私が患者様と接する際に常に心掛けていることになります。
「良い姿勢を意識し続けるのは難しくて・・・」
私もそう思うし、それはそれで良いと思います。
「何をしても結局、姿勢は良くならないんですよね・・・」
だからといって、このような意見には専門的な見地から同意出来ません。
理由は、相応の取り組みを行えば姿勢は良くなるからです。
姿勢改善の場合には「ここまですれば」という絶対量がある訳ではありません。
「姿勢が変われば足りているし、変わっていなければ足りていない」
という相対的な“量“が取り組む際には必要になります。
細かな点ですが、私の意見・立場もここで明確にしておきたいと思います。
現実的に不可能なケース
前項の①良い姿勢をとり得る「関節の可動域と筋肉の柔軟性、筋力」が不可能なケースは、「良い姿勢」をとることは不可能になります。
具体的にいうと
・骨の変形により可動域に制限が出ている
・筋肉の古傷によって相応の柔軟性を得ることが不可
・内科疾患や骨の変形によって神経にトラブルがあり相応の筋力を得ることが不可
これらの場合には、大変心苦しいですが、現実的には不可能です。
「表面上、良い姿勢をとることが出来ても」
いづれかの部分に負担を掛けてしまうことになります。
本来得られるメリットと、そのことによるデメリットを比較したうえで方針をご検討することが望ましいと考えます。
理由は、「何の為に良い姿勢をとる必要があるのか?」という点です。
呼吸の質を良くして、新陳代謝を促すのは、結果としてそれが健康な生活に繋がる可能性が高いからです。
“無理に姿勢を良くした弊害として、どこかに痛みが出てしまい、塞ぎ込んでしまうことになった。“
“姿勢は良くないかもしれないけど毎日不自由しない生活をしていたのに、足が痛くなって遠出が出来なくなった“
【姿勢を良くする】
ことのデメリットが語られる事はほぼありません。
でも、他の事と同様に姿勢についてもメリットとデメリットは表裏一体です。
姿勢を正す事にもリスクを含んでいることも、覚えておいて頂けたらと思います。
話は逸れましたが、
【改善不可能な状態でも現状を長持ちさせる方法はあります】
望みを断つような言い方はあまりしたくないのですが、現実を直視するとそのような方向へ転換されることも価値があるのではないかと個人的には考えています。
そもそも変形を防ぐにはどうすれば良いのか?
変形のメカニズムを知って頂くと、より理解が深まります。
変形するのは、「その部分に負担が集中した結果」です。
背骨でいうと、荷重はまず↓の椎間板に掛かります。
椎間板の中心部には「髄核」という「ゲル状」のものがあります。
これが荷重負荷に対して変形することで、クッションの役割を果たしています。
この椎間板に変性を来すとクッション性が弱まり、骨に負担が掛かります。
骨に負担が増すと
・変形
・骨の増殖
・関節包(関節周囲を取り囲むもの)の肥厚や短縮
が起こります。
つまり、椎間板の変性を防ぐことが骨の変形を防ぐことになります。
椎間板の変性を防ぐには??
椎間板には血管があまりありません。
つまり、
「血流を良くしても椎間板にはほぼ意味が無い」
ことになります。
椎間板がフレッシュな状態を維持する為には、
【椎間板の上下の骨が適度に動くこと】
が必要です。
それを見るのが↓のような
「動かした状態での触診」
です。
椎間板は、
・体を前に倒す(前屈み)の姿勢の際
・体を左に倒した際(体が左に傾いている方)
・体を右に倒した際(体が右に傾いている方)
・体を反らした際(反り腰や顎が上がった姿勢の方)
というように「椎間板内の髄核というゲル状の部分が変形します」。
この為に、前述の様に
「椎間板の上下の骨が適度に動くことで、血管がほぼ無くてもゲル状の髄核が動くことで固まる(変形する)ことを予防している」訳です。
これを応用して、当院では以下の様な背骨の触診検査を全員の患者様に毎回行っています。
◎頸椎の触診
◎腰椎の触診
◎胸椎の触診
これらによって、動きの悪い背骨を探します。
当院では、これらを敢えて「座った状態で」行っています。
理由は、頭の重さや背骨の長軸に対して重力が掛かった状態とうつ伏せ・仰向けでは「動きの悪い背骨を探す精度が異なる」からです。
当然ながら、寝ている姿勢よりも起きている姿勢の際に症状が出やすい訳なので、その条件に近付けた方がより正確に検知することが出来ます。
さて、背骨は24個ありますが、
「毎回、同じ部分の動きが悪い」
「いつもは正常なのに、今日は○番目の動きが悪い」
の2パターンがあります。
「毎回、同じ部分の動きが悪い」場合
・椎間板が既に変性しているから、骨も動きが悪いのか?
・いつも同じ部分に負担が掛かる姿勢をとっているのか?
・いつも同じ部分に負担が掛からざるを得ないようなインナーマッスルの問題なのか?
という点が疑われます。
いずれにしても、「毎回、同じ部分の動きが悪い」状態を放置することは、
【ただ、変形するのを静観して待っている様なもの】
です。
なので、変形を防ぐ、悪化を防ぐ為に計画的な継続した治療が望ましいです。
※「動きが正常な状態を維持する必要がある為に」今、動きを改善したとしてそれが明日まで維持出来るのか、1週間後まで維持できるのか経過を見る必要があるので計画的にご通院される必要があります。
また、もし仮にあなたが、お仕事の関係上、姿勢や環境面の変更が不可能だとします
デスクワークであれば、PCの高さを変えるとか、椅子の高さを変えれば
「前屈み際の折れ曲がる背骨の高さにバリエーションを与える事は可能でしょう」。
そうすれば、
「毎回、同じ背骨の動きが悪いことは、多分避けられます」。
でも、それが出来ないのであれば
「半永久的に通院して頂かなくては、現実的には維持出来ません」。
もちろん、“あなたがそれを望むのであれば“という前提です。
症状が快方に向かっても定期的にご通院されている方々は、このようなタイプの方になります。
私が決めることでは無いのでお伝えはしますが、あなたの価値観や将来設計に合わせてご選択下さい。
「いつもは正常なのに、今日は○番目の背骨の動きが悪い」場合
・いつもと違う姿勢をとられていたのかな。
・たまたまタイミングの問題(自然に改善されていく前にご来院になられただけのこと)で、勝手に改善されていく程度の問題だろうな。
という判断がつきます。
変形は一朝一夕に起こらない為に心配する必要が無いので時折、チェックアップする位で十分でしょう。
対して、
「先日、年に一度の異動で、新たなデスクに移った」
「先日、自宅の模様替えをして、テレビやご家族との位置関係が変わった」
様な場合には、慎重にならざるを得ません。
理由は、
「この“たまたま“が今後も続いていく可能性がある」
からです。
このような場合には、
「○ヶ月後位に、一度診させて下さい」
とお伝えしています。
そこで、“たまたまだったのか“どうかを判断します。
このような流れで、
・変形の前段階にあたる「椎間板のコンディション」
・更に前段階にあたる「背骨の動き」を見て、正す
・それを維持していく
ことになります。
背骨の動きが悪い部分は自分で正せるのか?
正せません。
理由は、↓の図をご覧下さい。
関節には
「各関節の動く範囲(可動域)」が決まっています。
それを超えると「脱臼・捻挫」になります。
動く範囲内でも
・ご自分で動かせる範囲
・ご自分では動かせない範囲(“遊び“みたいなもの)
が存在します。
例えば↓の様に「逆側の手」「他人」「壁」「机」等が補助してくれれば、ここまで反ることは容易です。
でも、左手だけここまで反ることは出来ないし、出来たら異常です。
この左手だけ反れる範囲が「自分で動かせる範囲内」。
他者の補助がなくては反れない範囲を「ご自分で動かせない範囲内」。
となります。
上記の触診では、24個の背骨と骨盤それぞれの間にある関節の「ご自分で動かせない範囲内の動き」を見ており、ご自分ではそれが分かり得ない為に、ご自分で正すことは不可能になります。
(だから、私自身も信頼できる方にお願いして正してもらっています。)
また、↓のような硬さが柔らかくなったところで「その内訳が重要」です。
理由は、
「動かない部分がそのままでも動いている部分が“より動く“ことで表向きの可動域は増えるからです」。
仮に、この方の指先が床に着くようになったところで、その内訳が改善されていなくては、「予防」的な観点から見たら無意味というか逆効果にもなります。
◎動いていない部分→変形が進む。
◎“より“動くようになった部分→捻挫(腰であればぎっくり腰など)のリスクが上がる。
というように、「身体が柔らかくなったのにむしろ、不健康になっている」というケースも多々あります。
受け取る方によってはセールストークと思われる節があるので予防的な観点のお話は、してはいますが、ゴリ押ししたりは開院以来しておりません。
但し、これが事実になります。
個人的には、「痛みが良くなれば良い」「痛い時だけ通院すれば良い」という方のお気持ちも分かるし、それはそれで良いと思っています。
「知っていれば、違った選択をしたのに・・・」
将来的にこの様な方を私の周囲からは出したくないので、お伝えさせて頂きました。
※通院開始前にレントゲン検査をしたうえでご持参頂き、私がそれをもとを半年なり1年治療して、同一条件下で再度レントゲン検査をして背骨の変化を視覚的にご確認頂く方法もあります。
(そのような場合には、私以外が施す他の治療法やマッサージ、エクササイズとの併用は効果に責任を持てないのでご配慮願います)
今回の記事が、あなたの生活の中で何かのお役に立てたら光栄です。
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