院長の整体新書 – 整体ブログ –

首の施術は危険なのか

  • 首痛

先日、オンライン英会話の先生から「今、私の国ではあなたのような仕事が話題になっているよ!」と言われました。詳細は知らなかったようですが、大体このような話に挙げられるのは良い話ではなく「首の施術後に命を落とした」の様な内容が多いです。「あなたはどうしているの?なぜ?」と事細かに聞かれたのですが、英語力が乏しく言いたいことの3割位しかることが出来なかったので、その悔しさを晴らす目的もあり、今回は首について述べていきます。

レントゲンを見ながらの説明

首の施術について

首の施術がハイリスクと言われる理由の1つがその特異的な構造です。背中や腰と異なり、椎骨動脈という血管(首を正面から見た際の下図の赤い部分が椎骨動脈)が首の骨自体の中を通っているという構造的な特徴に起因します。

椎骨動脈の説明

この動脈は「首の回旋」という左右を振り向く動作によって、血管内腔のスペースが変化し得ることが分かっています。また、そこに先天的な奇形や後天的な加齢変化を伴い得ることも分かっています。つまり、『元々血流が滞りがちで、血管壁が硬く、脆くなっている可能性がある部分に瞬間的な捻じれが加わったら・・・分かるよね?』という訳です。そこまで誰も言ってくれないという問題点もあるのですが、重要なのは施術に関係なく自分自身で振り向いた際にもそれらは起こっているという点です。因みに、ご自分で首をグルグルと回すストレッチや鳴らすのが危険だと言われているのもこれが理由です。

首を捻じることの意味

下記の文献では振り向いた際の動脈の内腔についての見解は割れています。但し、「施術によって捻じろうと思えば捻じれてしまうのは事実」です。もちろん、ご自身で「首を鳴らすのも同様」です。経験則としては「バキッと鳴らすことが目的」だと捻りを強調されがちだと感じます。私は「結果として鳴ることもある」のと「鳴らしにいくのは違う」と考えています。なぜなら、後者は意図的に一線を越えようとしている点からスピードと力の強さが過剰になる可能性があり、結果として深さも過剰傾向になるからです。これは、多くの方が思っていると思いますが、「鳴ったから何なんだ」という点に尽きます。『症状改善の為に状態をチェックしたら、リスクの確認はもちろんのこと、首の捻じれに対して手を施す必要があると判断した。だから、その為の手法として数ある中からこの方法を選択した』という大前提抜きで、耳にするのは「メニューにあるから」とか「お客様が希望されたから」という話です。吹けば飛ぶような規模の院とはいえ一応経営者でもある私にも無関係ではない反面、そういった類の話を聞く度に全く共感出来ない自分が10代から常にいます。そもそも、そういう仕事ではないというのが私の意見です。音の有無に関わらずに当初の目的が遂行されていれば成功というのが私の考えです。

可能な限り事故を防ぐ為の取り組み

施術前の段階

首の中の血流はレントゲンを撮っても正確には把握できません。血管造影をしたうえでのCT、またはMRI、MRA検査を行うことが必要です。でも、実際には症状から医師が検査の必要性を感じて初めて行われるものなので、あなたがそれを訴えても難しい場合や「あなたに疑うような症状が無い場合にはそもそも明らかになることはない」という現実的な難しさがあります。でも、現実には奇形や加齢変化による変形は存在している、潜んでるかもしれないのです。血管(動脈)は当然ながら酸素や栄養を各エリアに運搬する為のパイプです。つまり、その血管がどこのエリアに酸素や栄養を運搬しているのか?という知識があれば、その先のエリアの状態を機能面からチェックすることで酸素や栄養が十分に届けられているのか否かの判断材料にはなると考えています。もちろん、確実ではありません。でも、出来得ることを何もしないで「こっているから」「張っているから」「動きが悪いから」で首に手を施すよりは遥かに危機回避が出来ると考えて私はそのようにしています。

施術面において

13年間、月1ペースで自分の技術が錆びついていないか、良からぬ癖がついていないかの確認を含めて信頼出来て、忖度なくご指摘して頂ける為に関西まで通っています。(スポーツ動作と同様に施術は力学なので力任せではない)「出来ているつもり」「していないつもり」が最も危険だと認識しています。例えば、狙った関節や筋肉に対しての戦略を頭で思い描いたとしても、実際に自分が行っている動作のベクトルが滅茶苦茶ならば、本来狙った角度や強さで刺激が届く訳がないのです。つまり、知らず知らずの内に「捻じったり」「意図していない力が加わる可能性もある」訳です。更には、そもそも施術をもれなく結果に繋げる為には、意図した通りに実践出来なければいけない訳です。だから、安全面はもちろんご提供出来得る効果を取りこぼすことがないように、私はこのような行動を続けています。

予約面において

電話予約、予約対応を私がしている理由の1つもそれが理由です。例えば、電話のトーンや話す速度、おかけになってくる時間帯、その後の要望・・・お電話の相手が繊細な方なのか、せっかちなのか、大らかな方なのか、思い悩んでいるのか、思いつきなのか、お抱えの症状に対してどの様なご認識で今後どのようにしていきたいのか、等を大雑把にではありますが把握することが出来ます。(当然、どれが良くて悪いという話ではないです)この得た感覚と症状、患っている期間から私は自分がどうやってそこに携われるのか??を考えています。「私が診させて頂くにはリスクが高そうだ」「私の方針、力量ではお力になれそうもない」と判断した場合には、心苦しくも私は他院を勧めています。私一人がどうこうなるのは自業自得ですが、これは仕事であり、他人の将来が掛かっている可能性がある為に安全が最優先だと考え、私はそのようにしています。

参考

佐伯武史,浜岡隆文,栗原俊之(2013)『頚部回旋運動に伴う椎骨動脈血流変化の検討』CiNii,  (2024,11月14日閲覧)

首都大学東京人間健康科学研究科(2014)『椎骨動脈および内頚動脈の血流と大脳への流入量に関する徒手療法介入の影響』日本理学療法士協会  https://www.jspt.or.jp/eibun/2014/1402_1.html  (2024,11月14日閲覧)

横濱もえぎ野クリニック脳神経外科・脳神経内科『椎骨動脈解離-脳動脈解離ー』https://www.ymc3838.com/verte/ (2025,2月10日閲覧)

矜持整骨院
診療時間
08:00-12:00
16:00-21:00
  • 水(第2, 4, 5)は午後休診
  • 土は14:00まで

ご予約・お問い合わせはこちらから

03-3714-3855
完全予約制