四十肩・五十肩の治療と巻き肩との関係について
「我慢」
これは、投薬や手術のように薬剤やメスによって半強制的に患者様の体を変えることが出来ない当院のような院にとっては避けて通れない点です。
但し、これを患者様にも強いるのは私は違うと考えています。
また、これも完全な個人的見解ですが私は生き方に関しても同様に考えています。
だから、私は相手が誰であろうと自分以外の人の決定や意見に反対意見を言うことはありません。
「その人なりに考えて決断・行動しているのだろうから、他人が口出しする余地はないな」
通院頻度や回数、注意事項の順守など全てにおいて私はこういった考えです。
反対意見を言おうと言うまいと私に出来ることは限られていることがその理由です。
それでも、四十肩・五十肩に関しては「やり方次第で」差を付けることが私は可能だと経験しています。
四十肩・五十肩は、ある段階までいってしまうと、どの方法を選択しても「結果的に」患者様に「我慢をお願いせざるを得ない」特殊なものです。
極力その様にしたくないので、その「我慢を最小限にして頂く為の方法」を今回は書いていきます。
この記事は、約2分で読み終えることが出来ます。
四十肩・五十肩とは?
四十肩・五十肩は、名称だけで一括りに出来ない様々な病態があります。
病態が異なる為に、その後の治療も同じ【四十肩・五十肩】であっても異なるのが特徴です。
「友人は、放置していても治った」
「家族は、〇〇で治った」
つまり、こういったご自分以外の人との比較、(繰り返されている場合には)以前のご自分との比較はほぼ無意味です。
・腱(というスジ)が断裂しているもの。
・関節の中に石灰が沈着しているもの。
・約16個ある筋肉それぞれの問題によるもの。
・約16個ある筋肉のそれぞれの組み合わせによるもの。
など、数字が苦手なので組み合わせまで数えていませんが多くの病態が存在しています。
診て下さった先生がどこまで掘り下げたうえでの「四十肩・五十肩」なのか。
(実際には病名ではありませんが)、病名ありきで当てはめられてはいないのか。
こういったことで、治療法や通院先の選択を誤ると当然ながら、結果が変わります。
「どこまで求めるのか?」は様々だと思いますが、スタート地点である「何が問題の四十肩・五十肩なのか??」は非常に重要になります。
四十肩・五十肩にはステージがある
前述の通り、様々な病態があります。
但し、その病態の細分化が必要になるのはある程度の改善が進んでからになることが大半です。
例えば、スジが断裂していたらこれは可能な限り早く手術をすべきでしょう。
でも、手術に至らない程度のものであれば早期には、行うことは大きくは変わりません。
第1段階「炎症期」
何らかの要因で、肩関節の内部に炎症が起こります。
炎症があるので痛みが出ている状態です。
人によってはこの段階が数週間から数か月続くこともあります。
「痛みで夜に眠れない」
「痛みで寝返りがうてない」
「痛みで腕を動かせない」
程度問題ですが、このような症状が特徴的です。
炎症期にすべきこと
【炎症を落ち着かせること】
何よりも優先すべきなのは、この点です。
「固まるから動かして」
「固まるから温めて」
これは、この段階では誤りです。
この段階では
【整形外科との併用が好ましい】
と個人的には経験から考えています。
私は、カイロプラクティックという手法を主に用いています。
カイロプラクティックは自然治癒力を最大限にするものなので、それを妨げる可能性のある薬を使うことをご法度としています。
でも、私はこの段階では薬を使うことに賛成です。
ステロイドと鎮痛剤の注射が有効だとの結果も出ており、それで一日も早く「夜に眠れる状態を得る」ことの方が有益ではないかと考えています。
どのドクター、整形外科でもこれらを施してくれる訳では無いようなのですが、このような方法が有効であることはご認識頂いた方が良いと思います。
当院で行うことは「巻き肩の修正」です。
理由は、「巻き肩があると仰向けがより痛い」からです。
※眠る際の痛みを夜間痛と言います。
夜間痛のある方の多くは、巻き肩が故に(重力で肩がベッド方向に落ち込むことで)肩の前面が「引き延ばされて」より痛みが強くなっています。
従って、「炎症に配慮しながら巻き肩を修正する」ことがこの段階では課題になります。
また、後の然るべきタイミングでは「正しく腕が上がる状態にしていくうえで」二の腕が外に捻れる必要があります。
巻き肩は、肩の前方の組織の短縮を意味しており、二の腕が外に捻れることを阻害している現状を表しています。
つまり、この段階で巻き方を改善しておくことは、夜間痛の改善のみならず、腕を上に挙げられるようにしていく為にも必要不可欠になります。
巻き肩の種類
巻き肩の正し方と注意点について詳しくは、↓の記事をお読み下さい。
ここでは、前述の記事に書いていない種類について述べていきます。
①肩甲骨が前に行っているタイプ
②二の腕が前に行っているタイプ
③肩甲骨も二の腕も前に行っているタイプ
これらによって、当然ながら「手を施す部分が異なります」。
手を施す部分が違うと改善しません。
どのタイプかの識別が出来ないと施す部分が決まらない為に、巻き肩が改善しない。
巻き肩が改善しないと夜間痛も変わらない。
このような関係性になります。
第2段階「拘縮期」
明確に「炎症期」と「拘縮期」が区分け出来る訳ではありません。
従って、ケースバイケースであるここの見極めも診て下さる先生の力量の1つと言えるかもしれません。
この拘縮期は、「痛くて動かせなかった」「安静にせざるを得なかった」炎症期に起因する「関節の固まり(拘縮)」が本格的に形成されていく時期です。
「痛くて動かせなかった状態」
から
「痛くないけど動かせない状態」
分かりやすく言うとこのような段階です。
顕微鏡?レベルでみると拘縮状態にある筋肉は、筋肉を形成する細胞時代が変性している状態です。
つまり
「ただ揉んだり、押したりしても無意味」
です。
前述の通り、炎症期からの移行途中の場合には
・配慮されていないマッサージ
・配慮されていないリハビリ
によって炎症期への逆戻りの可能性もあります。
(痛みが無くて動かせない状態のまま、痛みだけが炎症期レベルで戻ってくるので結構大変だと思います)
このようなことに十分配慮しながら、拘縮を一早く改善する為に前述の約16個の筋肉の内、問題のある筋肉に手を施していくことになります。
第3段階「回復期」
この時期は、変性していた筋細胞の正常化に伴い、徐々に動きが増えていきやすい時期です。
少しでも「良い状態で」回復期を迎える為に第1・第2段階で手を施してきたことが重要になります。
例えば、巻き肩が放置されたまま回復期に移行してきたとします。
巻き肩の状態では、位置関係が異常なので「正しい肩の動き」が出来ません。
位置関係が異常だと骨同士が衝突してしまったり、伸び縮みすべき筋肉が正しく働かずに正しい動きが出来ません。
でも、「動きの内訳を無視して表向きの可動域だけを得るのは、どこかに無理強いをすれば出来ます」。
すると、無理強いをされた骨同士で炎症を引き起こしたり、筋肉が固まったりして再発要因になる可能性があります。
話を戻しますが、回復期から「巻き肩の修正をスタートする」のと「既に巻き肩が修正された状態から回復期をスタートする」のではその後の改善スピードが異なります。
このような理由から、
「各段階を確実にステップアップしてきたのかどうか」
が非常に重要になります。
肩はグルグル動かせるが故に複雑
人間の体は、関節の構造によっていくつかの分類がされています。
多くの関節は凹凸関係にある2つの骨から成っています。
しかし、凹凸関係なのでグルグル動かせる訳ではありません。
肩の関節は、「球関節」という構造です。
凹凸ではなくて、一方が「球・ボール状」な為に、グルグル動かすことが出来ます。
デメリットとしては、球・ボールの受け皿である肩甲骨の面が「大して凹んでいない」ということです。
受け皿が臼のように凹んでくれていればまだ安定するのに、凹んでいないので不安定。
不安定だから、筋肉に頼って安定させている関節なのです。
何が言いたいのかというと他の関節以上に「筋肉には細心の注意を払う必要がある」ということ。
誤った筋肉をほぐして、緩めてしまえば誤った方向に球・ボール状の一方が転がっていってしまいます。
この時点で、関節の位置関係は崩れて「正しい動きが出来ません」。
あとは前述の通り、
「正しい動きが出来ていないにも関わらず、症状が無いから動かす」
「動かすから、本来なら衝突しない部分が衝突したり無理を強いられる」
「それが蓄積するから炎症が組織が傷む」
「傷んだから炎症が起こる」
「炎症が起こるから炎症期になる」
四十肩・五十肩は、40代・50代でもならない方の方が大半です。
つまり、年齢や加齢だけが理由では無いのです。
この記事をお読み頂ければお分かりになると思いますが、肩は体の多くの部分の影響を受けています。
偏平足や足首の捻挫癖など、肩から離れている部分の影響の結果、肩の関節の位置関係が乱れて前述の過程を辿ることもあります。
度合いや年数によっては「戻せない状態」も存在する為に、全ての四十肩や五十肩が防げるとは到底思えません。
また、体の異常が無くても「正しい姿勢に対するのイメージと体現している姿勢との差」「正しいフォームに対するイメージと体現しているフォームとの差」によって「結果として関節の位置関係が乱れていれば」同じことになります。
四十肩や五十肩に対して、そこまで神経質になる必要があるかは分かりませんが、それだけ繊細な部分なんだという認識を持って頂けたらと思います。
四十肩で五十肩で痛みが出ることが多い部分
一般的に言われることが多い四十肩・五十肩は以下の様な【二の腕にかけて痛みがでます】。
四十肩・五十肩を疑うべき症状
・二の腕が痛い(前述の通り、肩ではない)
・(腕は上がるけど)ある角度の時だけ痛い
・痛い側を下にして横になると痛みが増す
・手が”反対側と比べて”上がらない
・手が”反対側と比べて”背中に回らない
という症状です。
症状が違うということは、原因になっている部分が違うことを示唆しています。
当然ながら、原因の部分が異なると手を加える治療箇所も変わってきます。
つまり、あなたの肩が
・どの動きの際に痛みが出るのか
・どの動きの時には痛みが出ないのか
・どの動きは硬くなっているのか
・どの動きは問題ないのか
という情報が不可欠になります。
これらは全て、手によって行う検査で分かることですがご来院の時に伝える際には参考にして頂けたらと思います。
四十肩・五十肩は治るのか
病態が様々な為に、中には理論上は治らないものもあります。
例えば、年齢を重ねていくと自覚の有無を問わずに肩の内部のスジが摩耗して切れていることが多々あります。
切れたスジを繋げることは手術以外では不可能です。
従って、理論上は治りません。
しかしながら、そういった例であっても日常生活での症状が無くなることも珍しくはありません。
【症状が無くなることを治った】と定義するのであれば、ほぼ全ての四十肩・五十肩は治ります。
しかしながら、前述の通り「正しい動きで治るかどうか」は別問題になります。
肩の関節は4つある
肩には単純に数えても約16個の筋肉が関わっていると書きました。
筋肉は「骨と骨とで成り立つ関節」を動かす為のものなので、言い換えると関節が多ければ多いほどに関わる筋肉の数も多くなるという関係性です。
・肩甲上腕関節(肩甲骨と二の腕)
・肩鎖関節(肩甲骨と鎖骨)
・胸鎖関節(胸骨と鎖骨)
・肩甲胸郭関節(肩甲骨とあばら骨)
の4つの関節を含めて一般的には【肩】と言っています。
更に、肩には以下のような【靭帯が形成する(靭帯と骨)関節みたいな役割をするもの】まであります。(烏口肩峰アーチ)
この狭い部分に、筋肉(棘上筋)やその筋肉と前述のアーチ間の摩擦を防ぐ為に潤滑油が入っている袋(肩峰下滑液包)というものもあります。
ハッキリ言って、いい加減にして欲しいとさえ思えてくる複雑さです(笑)
これらの構造物が動かした際に衝突したりすることで、四十肩・五十肩の要因になります。
四十肩・五十肩の方へ
本日も、四十肩・五十肩らしき患者様から新規ご予約のお電話を頂きました。
症状を伺い、先に整形外科を受診されることもご検討して頂く必要があると判断したのでその旨を伝えて、ご本人のご意向でその様にして頂きました。
当院ではこのご時世に面倒な、電話予約のみで皆様にお願いしている理由がこの点になります。
「ご来院頂けば初検料だけでも取れるのに」
患者様を1人、取り逃がしたとかそういう発想は10年前位からしていません。
開院1年目の今頃、「まずい・・・自宅家賃が払えないけどどうしよう」という状況下でも常に同じようにしてきたことが、今日では自分自身に対しての私のささやかな自慢でもあります。
18歳から貯めていた自己資金のみで開院しており、友人や家族に頼るのは私の目指す姿と整合性がとれないので当時、夜間の荷物仕分けのバイトで何とか乗り越えたのは良い思い出です。
その当時は、実家に戻らざるを得ないかどうかの瀬戸際だったので、自分の判断が正しかったのかとその後に全く悔いなかったと言ったら嘘になりますが(笑)
そんな事が正しいというつもりは毛頭ないし、そうしないと自責の念にかられて私自身が困るというのが実情です。
そのような状況でも何とかなるように人生設計をしていたので超えられましたが、そもそも多くの方はそのような状況にならないので、自分が正しいなんて口が裂けても私が言える訳がないですね(笑)
私の仕事は症状の為に全力を尽くすことであり、(来院時の不安感を少しでも減らす為にキャラクターを出していますが)人間性を売っている訳ではないのですが過去に一度だけ誤解させてしまったケースがあるので敢えてお伝えします。
私は聖人君子を目指している訳ではないし、言うまでもなくそうではありません。
私は「自分が患者として感じた不満や虚しさを晴らせる存在に自分自身がなりたくて」14歳でこの仕事を志しました。
どの方法をとっても完璧はないのだから、自分の理想に沿った形で可能な限り完璧に近づけていこうという考えです。
従って、聖人君子の様な過度な期待をされても応えられないので予めご了承ください。
人生の半分以上を自分本位な考えで生きているので、そういう意味では全く我慢をしてきた人間ではなく参考にならなくて恐縮ですが、
「この際に、今までの問題の部分を全部正してやる」
位の心積もりで、四十肩・五十肩の改善に取り組んで頂くのも1つの方法ではないかと考えています。
70代、80代になられた際に、脊柱管狭窄症で数百メートル歩くのも難しい。
膝が痛くて、ほぼ自宅で座っている。
頸椎症で指や腕が痺れていて、何かを持つのが大変。
これらと四十肩・五十肩を比べて優劣をつけることは出来ませんが、四十肩・五十肩の改善過程でこのようなリスクを下げることは出来ます。
日常が思い通りにいかない苦労はご本人様しか分かりませんが、現状を今後に生かす事も可能ですので少しでも希望を感じて頂けたら幸いです。
是非、今回の記事が四十肩・五十肩でお悩みの方のお役に立てたら嬉しく思います。
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